夏の長雨や高温多湿は、牧草に付着するカビや共生菌によるリスクを高めます。見た目では分かりにくいだけに、知識としての備えが重要です。
流涎症は、赤クローバー・白クローバー・アルファルファなどのマメ科植物に生えるカビ(Rhizoctonia菌類)が作り出す毒素「スラフラミン」を摂取した馬に見られる症状です。初めて見ると驚きますが、多くの場合は重篤な危険はなく、清浄な水を常に飲めるようにして脱水を防げば経過を見守れることがほとんどです。ただし、他の原因(口中潰瘍、異物、薬物反応、まれに狂犬病)の可能性を除外するため、症状が続く場合は獣医師に相談してください。
Rhizoctonia菌類は高湿度・干ばつ・過度の食べ尽くしといったストレスの多い環境のマメ科植物に繁茂しやすいため、流涎症は夏の放牧時にしばしば発生します。日高地方でも数年前に流涎症が見られ、クローバーのカビが原因と推測された例があり、放牧地を変更したところ収まったという実例があります。クローバーが多い放牧地で、夏に長雨が続く年は特に注意しましょう。
エンドファイトは、ペレニアルライグラスやトールフェスクの細胞間隙に共生する微生物で、アルカロイドを産生します。日本やヨーロッパの牧草用の品種には基本的に含まれていませんが、芝生用として販売されている種子には、耐病性・耐虫性を高めるためにエンドファイトの感染率が高い品種が多く使われています。
誤って芝生用の草(いわゆる「ケンタッキー31」などの銘柄を含む)を放牧地に播種・給与しないよう、種子購入時は必ず用途(牧草用/芝生用)を確認してください。
収穫した牧草の湿度が高すぎると、内部で発酵したりカビが生えたりします。カビ臭い牧草でも「寝藁だから食べないだろう」と考えがちですが、環境中にカビがあれば馬は吸い込むだけでも呼吸器に悪影響を受け、カビの毒素は血管から吸収されて食べた場合と同様の毒性を示すことがあります。天候不順の年に収穫した牧草は特に注意し、下草が腐っていたりカビていたりしないか確認しましょう。必要に応じて毒素吸着剤の給与も検討されます。