「放牧地が馬を作る」——草地のクッション性は、成長期の子馬の骨格形成に直結します。
放牧地は、青草という栄養源であると同時に、成長期の柔らかく脆い蹄・関節・骨への負荷を和らげる「クッション」でもあります。このクッション性が失われると、骨端炎の重症化、繋(つなぎ)が固くなる、クラブフット、蹄病といった、成長期整形外科疾患(DOD)のリスクが高まります。特に影響を受けやすいのが1歳馬です。
クッション性に影響するのは、土質(火山灰土壌=黒ボクや、河川敷の砂利の上の薄い表土など)を除けば、主に草の種類・草の密度・草丈の3つです。
放牧に適した草種は、踏圧に強いケンタッキーブルーグラスやオーチャードグラスなどです。これらはチモシーに比べて短い刈り取り=食べ尽くしにも強く、過放牧で放牧圧が高い場合でも完全になくなることはなく、条件が良くなれば再生します。一方チモシーは、一度食べ尽くされるとほとんど再生できず、なくなった部分に雑草がはびこりやすくなり、結果としてクッション性が失われます。
掃除刈りによって20〜30cm程度の草丈を維持し、牧草の密度を十分に保つことが、蹄や関節の負担を軽くするクッション性の維持につながります。乾燥が強い年は、子馬のクラブフットが一斉に増える傾向があります。もともと青草の密度が低い放牧地は乾燥して固くなりやすく、蹄や関節に痛みを生じやすいため、クラブフットの原因になります。
草地の密度が上がりクッション性が高まることで、クラブフットや蟻洞(ぎどう)、蹄の摩耗の減少につながり、結果として昼夜放牧(夜間放牧を含む長時間の放牧)がしやすくなるという好循環が期待できます。
木戸口や水桶の周辺は、馬の出入りが集中して裸地化しやすい場所です。裸地では砂が蹄に直接触れて摩耗が激しくなることがあります。対策としては、コンポスト(完熟堆肥)を多めに施用したり、バークやウッドチップを地面より高めに盛り上げて湿気とクッション性を保つ「犠牲エリア」化が有効です。詳しくは暑熱対策・夜間放牧のページもご覧ください。
成長期の骨や靱帯は、過剰な負荷で壊れてしまう一方、なるべく壊れにくい体を育てることも可能です。脚がまっすぐで蹄も大きく管囲も太く、筋肉もしっかりついている子馬であれば、早い時期から夜間放牧を開始しても良いという考え方があります。逆に、脚が曲がっていたり筋肉が不足していたりする子馬には、体ができるまでスケジュールを遅らせる対処も必要です。日本式の「出産→小パドック2週間→中パドック2週間程度→大パドックで大きな群れ」というステップは理にかなっていますが、すべての馬に一律に適用する必要はなく、個体の状態に応じて前倒し・後ろ倒しを判断することが望まれます。