「春は控えめ、秋にしっかり」が基本方針。窒素・リン酸・石灰・堆肥、それぞれの役割を理解して使い分けます。
ケンタッキーで長年牧場指導を行うThe Farm Clinicのロジャー・アルマン氏によると、「春には肥料を撒かない」というのが基本方針です。理由は、春の牧草はもともと高タンパク・高エネルギー・低繊維で急速に伸びるため、そこにさらに窒素を加えると青草の栄養価が上がりすぎ、それを食べる子馬の関節疾患(DOD)のリスクを高めてしまう可能性があるからです。そのかわり、8月以降にしっかり施肥するという考え方が示されています。
日高地方の実例でも、6月に窒素肥料(硫安・尿素など反あたり10kg程度)を施肥し、7月に掃除刈り、8月に土壌改良材や追肥、というように、夏を通じて段階的に施肥管理を行う年間計画が組まれています。
すぐに効いて牧草を青々とさせ、タンパク濃度を上げますが、効果は長続きしません。夏〜秋にかけての追肥の主役です。
土壌に吸着されてゆっくり放出されるため、秋に施肥すると翌春の牧草の立ち上がりが早くなります。リン酸は牧草の分けつ(株分かれ)を促進し、草の密度を上げる効果もあります。ただし、火山灰土壌はもともとリン酸吸収係数が高く、リン酸が土壌中に多く蓄積している場合も多いため、土壌分析の結果を見て過剰投与にならないよう注意しましょう。
石灰は「pHを上げるための調整剤」というより、牧草(=馬)が年間に消費するカルシウムを補うためのものと考えます。目安は反あたり50kgを、春と秋の年2回に分けて散布します。1回で大量に撒くと草のカルシウム濃度が急激に変化してしまうため、分けて撒くのが基本です。クローバーが多い、あるいは草の色が色あせている放牧地はカルシウム不足のサインと考えられます。
完熟堆肥には窒素はほとんど含まれないため、肥料というより土壌改良材として位置づけます。土壌の物理性(硬さ・水はけ)を改善するには、堆肥の散布が最も効果的とされています。できれば土壌が凍結する前(晩秋まで)に散布するのが理想です。湯気が立つような未熟(生)の堆肥は絶対に撒かないでください。散布後に草地で腐敗して周囲の栄養を奪い、かえって草を枯らして雑草化させてしまいます。しっかり発酵し、さらさらとした乾いた土のようになった堆肥を使いましょう。良い堆肥作りには、適度な水分と切り返しが欠かせません。また、馬の飼い葉に含まれるミネラルや乳酸菌も、良い堆肥・良い土作りに役立つとされています。堆肥による土壌改良は5〜10年単位の取り組みと考え、気長に継続することが大切です。
※堆肥化にかかる期間は、材料の配合・切り返しの頻度・気温によって数ヶ月〜半年程度と幅があります。心配な場合は、湯気の出ない・臭わない状態になるまで待ってから散布しましょう。
敷料としておが屑(木材のおがくず)を多用している牧場では、その馬糞堆肥の扱いに特に注意が必要です。稲わらや籾殻などの草本系の敷料は、通常の堆肥化で働く土壌細菌によって比較的早く分解されますが、おが屑のような木質(リグニン・セルロースを多く含む)の分解には、細菌ではなく糸状菌(キノコの仲間などのカビ)による分解が必要で、分解に長い時間がかかります。
このため、おが屑主体の堆肥は、見た目には黒っぽくなっていても中身は未熟なままになっていることが多く、そのまま散布すると次のような問題を起こす可能性があります。
おが屑主体の堆肥を使う場合は、切り返しを十分に行い、通常の堆肥よりも長い期間(半年〜1年以上)しっかり発酵・分解させ、木材特有のにおいが消え、原形が残らず土のように崩れる状態になってから使用することをおすすめします。可能であれば、稲わらや籾殻などの分解の早い敷料に切り替える、あるいはおが屑堆肥と完熟した通常の堆肥を混ぜて使うといった工夫も有効です。
| 時期 | 作業内容 |
|---|---|
| 6月 | 窒素肥料(硫安・尿素 各10kg/反目安)、青草・土壌分析 |
| 7月 | 掃除刈り、土壌改良材(生石灰)の検討 |
| 8月 | 掃除刈り+エアレーション+追播+鎮圧のセット作業、施肥 |
| 9月 | 窒素肥料の追肥 |
| 10月 | リン安を薄めに(反あたり10kg程度)+堆肥散布 |
| 11月〜 | 凍結前までに完熟堆肥を散布 |
※特定牧場の実例に基づく一例です。土壌分析の結果や気象条件に応じて調整してください。