「完全更新はしない」が世界共通の結論。土壌をほぐし、種を足しながら維持管理するのが基本です。
雑草が増えてくると、いっそ全部耕して播き直したい(完全更新)という気持ちになりますが、これは多くの場合おすすめできません。完全更新した放牧地は、本来1年半〜2年ほど休ませる必要がありますが、そこまで余裕のある牧場はほとんどありません。更新した翌年に放牧してしまうと、草の密度が低いために蹄を傷めやすく、あっという間に草がなくなって雑草が侵入し、更新前よりかえって悪化してしまう——という例が数多く報告されています。また、休ませている間は残りの放牧地への負荷が倍増し、そちらも傷んでしまいます。
そこで推奨されるのが不耕起更新=追播(オーバーシード)です。耕さずに種をまき足すことで、休ませる期間が短くても、あるいは休ませられなくても、それなりに草の密度を回復させることができます。アメリカ・ケンタッキーでも、よほどの状況でない限り完全更新はせず、追播が主体だとされています。
実際の巡回指導では、入り口付近の裸地がひどい牧区に対して「生育の早いペレニアルライグラス(PR)がよい」「8月中旬までがベスト」という具体的なアドバイスが記録されています。日高地方の牧場の年間作業例でも、8月中旬に掃除刈り・ハローがけ・追播・ローラーをセットで行っている実例があります。夏の高温期を過ぎ、秋の生育シーズンに向けて発芽・定着させるタイミングとして理にかなっています。
表土が硬く締まっている放牧地では、エアレーター→堆肥散布→pH調整、という組み合わせが基本的な改善策です。土を入れ替える「客土」は、火山灰の粘土質をかえって表面に持ち込むことになり、物理性を悪化させてしまうことが多いため、あまりおすすめできません。土壌が乾燥してスポンジ状になっている場合も、土を動かすより堆肥を入れて土を豊かにする方が効果的です。